抄読会・症例検討会

脳卒中 6つの観察項目

 前回、メディカルコントロールとプロトコールについてご紹介いたしました。救急隊の活動やプロトコールは日々ブラッシュアップされていますが、今回は「脳卒中が疑われる場合の観察項目」についてご紹介いたします。


 脳卒中が疑われる傷病者に対する身体観察については、令和4年度の救急業務のあり方に関する検討会で特に注目された領域です。日本脳卒中学会からの提案をもとに、機械的血栓回収療法の適応となる主幹動脈閉塞(Large Vessel Occlusion, LVO)に伴う脳卒中を予測する新たな観察項目が導入されました。

これには、従来の病院前評価法(例:FAST:Face, Arm, Speech, Time、CPSS:Cincinnati Perhospital Stroke Scale、KPSS:倉敷病院前脳卒中スケール etc.)で脳卒中が疑われる場合に加え、7つの新規観察項目が提案され、このうち4項目以上を満たす場合には、機械的血栓回収療法を実施できる医療機関への直接搬送が推奨されるようになりました。

その後、日本脳卒中学会からのさらなる提言により、観察項目が6つに改められました。これらの項目に基づいて脳卒中が疑われる場合、そのうち満たされた項目数(陽性項目数)に応じて「感度」や「陽性的中率」が示され、これを基に機械的血栓回収療法の適応となるLVOの予測が可能となります。この予測値は、血栓回収医療機関への直接搬送を考慮するための指標として提案されました。

検討会では、各地域における医療資源や医療機関の受入体制を考慮した搬送指標の活用方法についても議論されました。例えば、

「医療資源や医療機関の受入体制が豊富な地域・期間」では、6項目のうち2項目が陽性であった時点での搬送を考慮する

ことが提案されています。一方で、

「医療資源や医療機関の受入体制が相対的に不十分な地域・期間」では、3項目が陽性であった時点での搬送が考慮される

ことになります。

このように、新たな観察項目や搬送指標の導入は、脳卒中治療の質の向上を目指し、救急隊員が現場でより適切な判断を下すためのものです。都道府県のメディカルコントロール協議会や地域協議会は、これらの検討結果を踏まえて、救急隊員への教育や指標の活用方法についてさらに検討するよう促されています。


 いかがでしょうか?FASTやCPSSのみならず上記の6項目を観察することで、LVO症例を如何に速やかに血栓回収療法まで持っていくか、が問われています。救急隊が「脳卒中疑いです!」と言う時には、どの観察項目が何個当てはまっているのか、ぜひ訊いてみてください。

-抄読会・症例検討会