抄読会・症例検討会

アナフィラキシーガイドライン改訂2022(2023_0301版)

 アナフィラキシーガイドラインが8年ぶりに改訂され、主に「1. 定義と診断基準」が変更になりました。日本救急医学会でも簡易チャートを掲示しています。この改訂における背景やアナフィラキシー対応における注意点について、ごく一部ですがご紹介いたします。

アナフィラキシーを疑う場面では血圧低下・気管支攣縮・喉頭症状いずれかのみでも診断

 改訂となった診断基準では世界アレルギー機構(WAO)が提唱する項目として3つから2つへ集約されました。アナフィラキシーの定義は「重篤な全身性の過敏反応であり、通常は急速に発現して死に至ることもある状態」、重症のアナフィラキシーは「致死的になり得る気道・呼吸・循環器症状により特徴づけられるが、典型的な皮膚症状や循環性ショックを伴わない場合もある」としています。

◆診断基準 ※GL本文はコチラ

 本ガイドラインはさまざまな国内の研究結果やWAOアナフィラキシーガイダンス2020に基づいて作成されていますが、「国内でもアナフィラキシーに関する疫学的な調査が進み、ようやく本ガイドラインに反映させることができた」と、国内でのアナフィラキシーの誘因に関する調査や症例解析が進んだことが強調されています。

◆薬物治療:第一選択薬はアドレナリン筋注です筋注!


・心疾患、コントロール不良の高血圧、大動脈瘤などの既往を有する患者、合併症の多い高齢患者では、アドレナリン投与によるベネフィットと潜在的有害事象のリスクのバランスをとる必要があるものの、アナフィラキシー治療におけるアドレナリン使用の絶対禁忌疾患は存在しない

・アドレナリンを使用しない場合でもアナフィラキシーの症状として急性冠症候群(狭心症、心筋梗塞、不整脈)をきたすことがある、アドレナリンの使用は、既知または疑いのある心血管疾患患者のアナフィラキシー治療においてもその使用は禁忌とされない

経静脈投与は心停止もしくは心停止に近い状態では必要であるが、それ以外では不整脈、高血圧などの有害作用を起こす可能性があるので推奨されない(むしろ禁忌に近いのでは?)

◆薬物治療:第二選択薬(アドレナリン以外)


・H1およびH2抗ヒスタミン薬は皮膚症状を緩和するが、その他の症状への効果は確認されていない

• グルココルチコイドは作用発現に数時間を要し、二相性反応を予防すると考えられているが、有害な影響を及ぼす可能性が報告されている。

 うーむ、もうステロイド併用は古いですかね。アドレナリンのみ、半減期短いので症状診つつ短時間で反復投与、でしょうか。また、補液の効能も強調されています。このほかトピックスとして「落花生やクルミなどのナッツ類や果物がソバや甲殻類よりも誘因として高い割合を示した」「造影剤のみならず、NSAIDsなどの鎮痛薬なども危険因子」と指摘されています。


 ごく簡単な紹介ですがいかがでしたか?本ガイドラインは小児から成人までのアナフィラキシー患者に対する診断・治療・管理のレベル向上と、患者の生活の質の改善を目的にすべての医師向けに作成されていますので是非ご一読下さい。先生方の診療のさまざまな場面でのアナフィラキシー対策に役立てて頂ければ幸いです。

-抄読会・症例検討会