抄読会・症例検討会

抄読会 #6:Lance‑Adams Syndrome(LAS)


 ランス・アダムス症候群は比較的稀な神経疾患で、主に重度の低酸素状態や低血糖後に発生します。この症候群は、けいれん・不随意運動、および回復する意識障害を特徴とします。救命救急センターであれば「CPA ROSC後に遷延する意識障害」で鑑別に挙がるかもしれません。今回は症例報告「心停止後のランス・アダムス症候群」をご紹介します。

  • 65歳女性:高炭酸ガス血症による呼吸不全とその後のCPAで搬入
  • CPR10分でROSC、24時間後に意識は完全に回復
  • ICU入院5日目にレスピから離脱したが、SASのため非侵襲的換気が必要
  • 難治性ミオクローヌスを発症:特定の体位変換・運動や触覚刺激によって惹起され、休息時には軽減
  • 臨床的にランス・アダムス症候群(LAS)に一致
  • LASは稀な低酸素後ミオクローヌスで意識は回復することが多い
  • LASとミオクロニーてんかん(MSE)との区別が困難
  • LASは発症が遅れ(約4日後)、MSEは早期(24時間以内)に出現
  • 当症例は蘇生後24時間以内に早期ミオクローヌスを発症し、LASとしては非典型的
  • ミオクローヌスの発症時期だけではLASとMSEを区別できないため、意識レベルの慎重な評価が必要
  • MSE患者は予後が悪いが、LAS患者は早期心理生理学的リハビリテーションが有効で良好な結果を得る
  • LASの病理生理は多様で、小脳のGABAおよび5-HT経路の乱れが原因か。多くの患者は脳損傷を認めない
  • Pirasetamによる3週間の治療で患者のミオクローヌスが改善

皆様、似たような症例を経験して「MSE止まらない…」と難渋したことありませんか?…それLASかもしれません。クロナゼパム試す価値ありです!ピラセタム…はどうなんでしょうか?

LASを簡単にまとめてみました。Lance JW, Adams RD. "The syndrome of intention or action myoclonus as a sequel to hypoxic encephalopathy." Brain. 1963;86:111-36.

臨床症状

ランス・アダムス症候群の主な臨床症状には、以下が含まれます:

  • ミオクローヌス:短時間の筋収縮であり、しばしば不随意運動として出現
  • 意識障害:当初は著しく低下も回復することが多い
  • 認知機能障害:記憶障害や実行機能の障害など、認知機能障害が出現
  • 歩行障害:ミオクローヌスやその他の運動障害が出現するがリハビリで回復可能

診断

ランス・アダムス症候群の診断は、臨床症状、患者の医療歴(特に低酸素状態や低血糖状態のエピソード)、および脳波(EEG)やMRIなどで行われます。明らかな器質的脳損傷は伴いません。

治療

ランス・アダムス症候群の治療は、主に症状のミオクローヌスをコントロールするために、クロナゼパムやバルプロ酸などの抗てんかん薬が一般的に使用されます。また、認知療法や物理療法なども推奨されます。

参考文献

こんな治療方法もありますご参考まで:Asahi T, et al. Alleviation of myoclonus after bilateral pallidal deep brain stimulation for Lance-Adams syndrome. J Neurol. 2015 Jun;262(6):1581-3 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25929661

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