弘前大学大学院医学研究科 救急・災害講座の横田貴志先生の研究論文が、2026年8月4日付で学術誌『Acute Medicine & Surgery』にアクセプトされました。

研究の概要
本研究は、日本循環器学会 Cardiovascular Shock Registry のデータを用いて、心原性ショック患者に対する病院到着直後の初期輸液の実態と、その臨床的影響を検討したものです。 心原性ショックでは、循環維持のために輸液が行われる一方で、肺うっ血を悪化させる可能性も懸念されており、初期輸液の意義については十分には明らかになっていませんでした。
対象と方法
- 日本循環器学会の心血管ショックレジストリ(JCS Shock Registry)に登録された、心原性ショック患者586名のデータを分析
- 対象患者を肺うっ血の「あり(442名)」と「なし(144名)」に分類し、初期輸液の投与量および30日死亡率との関連を調査
結果
- 病院到着後30分以内に、全体の96.9%(568名)の患者に対して初期輸液が実施されていることが判明しました
- 肺うっ血を伴う患者は、伴わない患者と比較して全体的な30日死亡率が高いことが示されました
- しかし重要な点として、投与された初期輸液量に基づくグループ間の比較では、両グループにおいて30日死亡率に差は認められませんでした
- 多変量解析では、高齢、収縮期血圧低値、病院到着後30分以内の1001~2000 mLの輸液量が30日死亡の関連因子として示されました
結論と臨床的意義
心原性ショック患者への初期輸液投与は、一般的な臨床実践として行われています。本研究により、肺うっ血を伴う患者は全体的な死亡率が高いものの、病院到着後に投与される初期輸液量が30日死亡率の悪化に関連するわけではないことが示されました。今後、心原性ショックに対する適切な初期輸液量や病院前輸液の安全性を検討するうえで、重要な基礎資料となることが期待されます。
横田先生、ならびに共同研究者の皆様、誠におめでとうございます!