広報・インタビュー

最終回!弘大病院支援指揮所と救命センター患者受入れ最前線での活動報告(令和5年度 東北ブロックDMAT参集訓練 by 奈良岡先生)

 既に4回にわたってお送りしている、令和5年10月14日「東北ブロックDMAT参集訓練」の各拠点活動報告ですが、今回が最終回となります。訓練の概要はコチラ津軽サービスエリアでの活動はコチラ青森空港SCUでの活動はコチラ津軽・西北五DMAT活動拠点本部での活動はコチラをご参照ください。本記事では「弘大病院支援指揮所と救命センター患者受入れ最前線」での活動についてご報告します。


 私は元々決まった役割は無く(編集部註:奈良岡先生は弘大救命センターに居る待機医師役でした)DMAT活動拠点本部の見学でもしようか、と気楽にしていたのですが訓練前日、弘前大学医学部附属病院支援指揮所を統括する花田教授から「先生明日ヒマ?救命センターの受け入れ担当医師役やってくんない?」

「患者受け入れて最初のトリアージしてDMAT隊に割り振るだけでいいから!よろしくね~」

「あっハイ…」といった流れでした。若干不穏な気配を感じつつ、しかし、名簿には一山先生も医師役として載っていたので「ま、大丈夫でしょ」と高を括っていたところ一山先生は当日学会で不在…そういえば前日発表予行やってたじゃん!と脳内でツッコミを入れて医師役一人で訓練に臨みました。

訓練当日、本物の救命センターは通常稼働しているため、訓練は多目的棟の1階を救命センターに見立てて行いました。

左手が多目的棟・仮設救命センター:弘前消防署から応援頂きました!
救命士にも参加頂き、本当に入口からストレッチャー搬入して臨場感溢れる訓練ができました!
津軽SA参集拠点から続々と支援に駆けつけて頂きました:山形県病DMAT隊
弘大支援指揮所:花田教授がEMIS見ながら医療センターDMAT隊に活動指示中
状況開始です…
支援指揮所のクロノロ
押し寄せる模擬患者…
赤トリアージはかなり重症な設定
模擬患者一覧:続々と患者が押し寄せます…ほとんど赤です…

私(救命センター医師役)の仕事の流れですが、とくに前振りもマニュアルも無くブッつけ本番で以下のようでした

①救急隊や支援指揮から搬入要請の電話受け・情報収集・搬入時間調整

②センター内DMAT隊・支援指揮所との情報共有

③受け入れ・トリアージ→④DMAT隊へ割り振り

⑤DMAT隊からの検査やCTなどの要請受け・院内調整

⑥院内各科への頼診・OP室・カテ室調整

⑦入院ベッド調整・転院調整…などなど

つまり、

ずーーーーーーっと電話しっぱなしです。お願いしまくり頭下げまくりマゾですか?

直接患者診る時間無いんです。③④は時間的に厳しい…しかも、

複数件まとめて要請来たり同時搬入したりしまくりです…

災害広域搬送の他、弘前市内や津軽医療圏での災害による患者や、同時発生した(という想定の)一般重症救急患者(心筋梗塞や脳卒中・covid-19感染症など)にも対応しなくてはなりません

これを医師一人で段取りは無理です花田教授…

手が足りませぬ…応援ください!
DMAT本部を支援していた医療センターDMAT隊を引き抜いてもらいました…

と、DMAT隊が増えてもセンター内の調整役医師は私一人…連絡ミスや共有落ちが目立ちはじめます。ついに、見かねた某看護師から

センセ、全然回ってないよ?もうDMAT隊に(トリアージと症例振り分け)投げたら?

との厳しいご指摘。まあ福音だったワケですが。というわけで、

③受け入れ・トリアージ→④DMAT隊へ割り振り

につきまして山形県病DMAT隊 根本先生を筆頭に丸投げさせて頂きました!

スミマセン、受入れ・トリアージ・振分け丸ごとお願いします…

繰り返しますが、私が直接患者診察して評価して振り分けるヒマなんか無かったですからね?調整だけで手一杯です。ほとんど医療ロジスティック的な仕事でした。

この後、DMAT隊のテキパキした活動でなんとか遅滞なく回りはじめましたありがとうございました!

まだまだ来ます
止まらない救急搬送…比較的軽症なら弘前市内他院へ転院させた症例もあります
まだOPできるけど心カテと脳外手術はもう無理…
そろそろ入院ベッドがキツい…

OPも入院ベッドももう厳しい…というところで状況終了となりました。正直しんどかったです。訓練コントローラーに講評頂き、

「DMAT隊と上手く役割分担できてましたね!」

と褒めて頂きましたが、それ、看護師にツッコまれて丸投げしただけです…まあ結果良ければ良いですか?何だか、DMAT本部では「奈良岡がパニクってる」と大ウケだったと聞きましたが…皆様ドSですか?

コロナ明け、久々の東北DMAT参集訓練ということで、「顔の見える訓練」として非常に有意義だったと思います。私自身は魔女の鍋にツッコまれた気分でしたが学び・気付きが多数ありました。特に受入れ側(支援を受ける側)の心得として

DMAT隊に最大限・有効に活躍してもらうことが大切

だなあと痛感しました。院内の医師は連絡・調整で手一杯ですし、実際の災害時も同様だと思います。一方、

DMAT隊は診療支援はできても、院内の検査の段取りやOP、入院・転院先の選定は難しい

これも当然かと思います。院内の医師にしかできない段取りがあるわけで、訓練中に調整していると、

受入れ後の精査・手術・入院の段取りが大変

ということをヒシヒシと感じました。訓練ですから割とスムーズに頼診・治療・入院転院が段取りできましたが、実際はどうなのだろうと。連絡や調整は地元医師にしかできない部分も当然あるかと思います。ロジスティックの大変さが少しわかった気がしました。

患者情報を紙フォームに手書き…煩雑で分かりづらい・申し送り大変・電カル使えるのか?何か良いアプリとかないの?

などなど、実際の災害・実臨床を考えると問題噴出でもありました。これも訓練の成果であり、次回まで改善できていれば嬉しいなあと感じました。DMAT隊・消防・模擬患者の学部生ボランティアほか関係各位・皆様お疲れ様でした!


 奈良岡先生ありがとうございました。また、訓練に携わった皆様、大変お疲れ様でしたありがとうございました。「顔の見える訓練」確かに大事だと思います。さて、本稿で令和5年度「東北ブロックDMAT参集訓練」の報告連載は終了となります。来年度は山形での開催、DMAT隊としての訓練活動をご報告できればと存じます。これからの災害時に向けた活動の一助となれば幸いです。ありがとうございました。

-広報・インタビュー
-