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IAEA最新ガイドライン公開

 「原子力・放射線緊急事態における医療対応2024」が公開されました→コチラからダウンロードできます。このマニュアルでは、原子力災害や放射線災害時の医療対応について、その準備と実践的な手順を包括的に解説しています。

主な内容

  • 緊急事態の定義と種類: 原子力災害や放射線災害の定義、そして起こりうる様々なタイプの緊急事態(原子炉事故、臨界事故、線源の紛失・盗難、産業用線源の事故、医療被ばく事故、輸送事故、悪意ある使用、空気・食品・水の汚染など)について説明しています。
  • 医療対応の目標: 緊急事態における医療対応の目標は、人命救助、身体的・精神的な影響の軽減、そして社会・経済活動の早期再開などが含まれます。
  • 医療対応の準備: 事故の種類、規模、場所などを考慮した医療対応計画の策定、医療従事者の訓練、資材の準備、そして訓練や演習の実施が重要となります。
  • 病院前レベルの対応: 事故現場における初期対応、トリアージ、除染、搬送などの手順が詳しく解説されています。
  • 病院レベルの対応: 病院における患者の受け入れ、トリアージ、除染、内部被ばくの治療、線量評価、そして精神的なケアなど、病院における包括的な医療対応について説明しています。
  • 医学的フォローアップ: 長期的な健康影響を評価するための医学的フォローアップの重要性と、そのための体制の構築について解説しています。
  • 線量評価: 臨床症状、生物学的検査、物理学的線量測定など、様々な線量評価の方法とその重要性について述べています。
  • メンタルヘルスと心理的サポート: 緊急事態が人々の精神的健康に与える影響と、そのサポートの必要性について解説しています。
  • 悪意ある行為への対応: 放射性物質を用いた悪意ある行為への対応における考慮事項と、医療従事者の安全確保の重要性について説明しています。
  • 放射線防護の基本原則: 時間、距離、遮蔽といった放射線防護の基本原則と、医療従事者のための安全対策について解説しています。

各セクションの詳細

セクションA:病院前レベルの対応手順

  • 手順A1:病院前対応の開始:
    • 原子力・放射線災害発生の通報を受け、医療対応責任者(指令員)が対応を開始するための手順。
    • 通報内容の確認、必要な救急隊員や搬送チームの決定、関係者への情報伝達など。
  • 手順A2:救急医療チーム到着までの現場での行動:
    • 救急医療チーム到着までの間、現場に最初に到着した人が取るべき行動を説明。
    • 現場の安全確認、負傷者の状況確認、救急医療チームへの情報提供など。
  • 手順A3:現場での救急医療対応:
    • 救急医療チームが現場で行うべき医療対応の手順。
    • トリアージ、救命処置、除染、病院への搬送など。
  • 手順A4:病院への負傷者搬送:
    • 負傷者を現場から病院へ搬送する際の手順。
    • 汚染管理、搬送中の医療行為、病院への情報伝達など。
  • 手順A5:負傷者の放射線学的調査:
    • 負傷者の体表や衣服の汚染を監視するための手順。
    • 測定方法、汚染レベルの評価基準、除染の指示など。

セクションB:病院での手順

  • 手順B1:病院対応の開始:
    • 病院における緊急医療責任者が、負傷者受け入れのための病院対応を開始するための手順。
    • 病院内の緊急体制の構築、受け入れ・治療エリアの準備、情報伝達など。
  • 手順B2:病院における負傷者の受け入れ:
    • 負傷者受け入れ時の手順。
    • 負傷者の情報確認、救急隊員への指示、多数傷病者発生時の対応など。
  • 手順B3:救急車受け入れエリアでの負傷者の評価:
    • 救急車受け入れエリアまたはトリアージエリアでの負傷者の評価とトリアージの手順。
    • 医学的トリアージ、放射線学的トリアージ、汚染除去など。
  • 手順B4:病院における汚染管理:
    • 病院内での汚染管理体制の構築に関する手順。
    • 救急車受け入れエリア、治療エリアの準備、防護具の準備、汚染が発生した場合の対応など。
  • 手順B4a:汚染された負傷者の評価と治療:
    • 汚染された負傷者の評価と治療に関する手順。
    • 放射線学的調査、試料採取、除染、内部被ばくの治療など。
  • 手順B4b:外部被ばくの評価と治療計画:
    • 外部被ばくした患者の評価と治療計画に関する手順。
    • 医学的評価、線量評価、症状に基づく治療方針の決定、専門病院への搬送など。
  • 手順B5:治療エリアにおける患者の除染:
    • 治療エリアにおける患者の除染手順。
    • 創傷、開口部、皮膚、毛髪の除染方法など。
  • 手順B6:内部汚染の医療管理:
    • 内部被ばくした患者の治療に関する手順。
    • 放射性核種の種類、患者の状態、線量評価などを考慮した治療薬の選択、効果の評価など。

セクションC:医学的フォローアップ

  • 手順C1:医学的フォローアップの手配:
    • 緊急事態後の長期的な医学的フォローアップ体制の構築に関する手順。
    • 登録者の選定基準、登録情報の収集、体制の確立、情報提供など。

セクションD:線量評価

  • 手順D1:細胞遺伝学的線量測定:
    • 細胞遺伝学的分析のための血液試料採取と、細胞遺伝学的線量測定に関する手順。
    • 試料採取方法、保存・輸送方法、分析方法、線量推定など。
  • 手順D2:放射線量の早期推定:
    • 医療従事者向けの、放射線量の早期推定に関する一般的な情報と手順。
    • データ収集、被ばく部位の特定、線量推定方法、症状との比較、確定的な線量測定など。

セクションE:メンタルヘルスと心理的サポート

  • 手順E1:準備段階におけるメンタルヘルスと心理的サポート:
    • 緊急事態発生前の準備段階におけるメンタルヘルスと心理的サポート体制の構築に関する手順。
    • 専門機関や担当者の選定、計画策定、情報提供、教育訓練など。
  • 手順E2:緊急事態中の一般市民に対するメンタルヘルスと心理的サポート:
    • 緊急事態発生時における一般市民へのメンタルヘルスと心理的サポート提供に関する手順。
    • 対応体制の構築、情報提供、心理的応急処置、長期的なサポートなど。
  • 手順E3:緊急時対応要員に対するメンタルヘルスと心理的サポート:
    • 緊急時対応要員へのメンタルヘルスと心理的サポート提供に関する手順。
    • 訓練、ストレス軽減対策、カウンセリングサービスの提供など。
  • 手順E4:病院レベルにおけるメンタルヘルスと心理的サポート:
    • 病院における、原子力・放射線災害の影響を受けた人々へのメンタルヘルスと心理的サポート提供に関する手順。
    • 医療従事者への情報提供、患者と家族へのサポート、長期的なサポートなど。

この資料は、原子力・放射線災害時の医療対応を包括的に網羅しており、それぞれのセクションが具体的な手順を提供することで、実務担当者にとって非常に役立つ内容となっています。また、付録では、各国保健当局、病院計画、必要な機器・物資、精神保健サービス、悪意ある行為への対応、放射線防護の基本原則など、より詳細な情報が提供されています。これらの情報は、原子力・放射線災害への医療対応を効果的に行うために不可欠な知識となります。是非ご一読ください!

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