1. 例えばこんな症例
11歳男子、給食でそばを誤食。数分以内に口腔内違和感、咳嗽、全身の蕁麻疹を認めた。血圧92/60mmHg、SpO₂ 93%、喘鳴あり。学校教員がエピペン®携帯を思い出すが、本人が針を恐れて抵抗
このような場面において、新しい選択肢となるのがアドレナリン点鼻薬「ネフィー®」(2025年9月19日承認)です

2. アナフィラキシー対応の第一原則
- アドレナリンの迅速投与が最重要
- 投与経路:ガイドライン上は筋肉内(IM)投与が第一選択
- 迅速投与の遅れは致死率上昇と相関
アドレナリンを打つ勇気が生死を分ける
いやもう、本当にそう思います。でも針が怖いのもわかります。
3. ネフィー®とは?— 点鼻で投与できるアドレナリン
| 項目 | ネフィー®点鼻液 | エピペン®注射液 |
|---|---|---|
| 成分 | アドレナリン | アドレナリン |
| 投与経路 | 鼻腔(粘膜吸収) | 大腿前外側(筋注) |
| 用量 | 1mg(15〜30kg未満) / 2mg(30kg以上) | 0.15mg / 0.3mg |
| 投与方法 | 片側鼻腔にワンプッシュ | 筋肉内注射(自動) |
| 保存 | 常温保存(1–30℃) | 室温保存(<25℃) |
| 処方制限 | 登録医師のみ可 | 登録医師のみ可 |
4. 作用機序

- α₁受容体刺激 → 末梢血管収縮 → 血圧上昇
- β₁受容体刺激 → 心拍数・心拍出量増加
- β₂受容体刺激 → 気管支拡張
結果として呼吸器・循環器症状を改善:鼻腔 → 血流 → 速やかな全身作用(筋注と同等速度を示唆)
5. 国内試験データ(第III相)
- 食物経口負荷で誘発されたアナフィラキシー患者(6–17歳, n=15)
- 有効率:全体73.3%(1mg群83.3%, 2mg群66.7%)
- 主な副作用:振戦(20%)、鼻粘膜障害(13.3%)
直接比較試験はありませんが、薬物動態的にエピペン®と同等以上とされています
6. 活用場面のイメージ
「補助治療薬」であり、筋注アドレナリンの代替ではない。
改善が乏しければ速やかにエピペン®投与+救急搬送 が必要
| シーン | おすすめの使い方 |
|---|---|
| 学校・保育所 | 教職員が点鼻投与可能(針に抵抗がある児への代替手段) |
| 小児外来 | 補助的治療、注射準備までの橋渡し |
| 野外活動/救急車到着前 | 一次対応として有用 |

7. 処方と使用指導のポイント
- 登録医師制度:オンライン講習修了者のみ処方可能
- 患者指導時のチェックリスト
- 発作出現時はためらわず使用
- 使用後も症状残存時は再投与・救急要請
- 使用後の器具廃棄と再発防止対応を学ぶ
8. 救急医の視点:臨床現場での意義
針への恐怖や誤操作による投与遅延は、これまで教育現場・家庭で大きな問題でした。ネフィー®はそのハードルを下げ、「とにかく早くアドレナリン」という救急原則を実践しやすくする手段として期待されます。
まとめ
- ネフィー®は2025年承認の新しいアドレナリン点鼻薬
- 非侵襲・簡便だが、補助的治療薬扱い
- 教育現場や救急外来での即応性向上に寄与する可能性あり
振り返り
- 筋注アドレナリンが第一選択である理由を説明できますか?
- ネフィー®はどのような場面で有効と考えられますか?
- 使用後の対応(救急搬送・再評価)をどのように行いますか?
本記事は医学生・研修医を対象として作成したものであり、最新添付文書やガイドラインを併せて参照して勉強してください。

