広報・インタビュー

カターニア大学総合病院での研修を終えて(by 横田先生)

 当救命センターの横田先生が、イタリア・カターニア大学関連病院における専攻医海外研修(第Ⅱ期)を修了し、無事帰国されました。

 本研修プログラムは、医学部附属病院と被ばく医療連携推進機構の連携により、グローバルな視点を持つ医師の育成を目的として実施されているものです。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、5年越しの再開となった第Ⅰ期に続き、今回の第Ⅱ期派遣も、日本とイタリアの医療施策や教育体制、そして文化の違いを肌で感じる貴重な機会となりました。

 研修の舞台となったカターニアは、シチリア島の東海岸に位置し、イオニア海と欧州最大の活火山エトナ山に抱かれた美しい街です。「南のミラノ」とも称されるこの街は、歴史的な街並みと活気あるナイトライフが融合し、温暖な地中海性気候のもとで多くの学生や研究者が学んでいます。

カターニアはシチリア島の東岸中央あたり

 異文化の中で視野を広げ、現地の医療現場に触れてきた横田先生の研修レポートを、現地の息吹とともにお届けします。横田先生、よろしくお願いいたします!


 2025年9月下旬から10月上旬にかけて、イタリア・シチリア島にあるカターニア大学総合病院で研修を行い、現地の救急診療体制や医療文化について学ぶ貴重な機会をいただきました。ここでは、その中で印象に残ったことをいくつかご紹介します。

カターニア大学総合病院

救急診療体制と患者の様子

 カターニアでは救急診療は基本的に無料のため、軽症から重症までの本当に多くの患者さんが受診していました。待合室は混雑しており、廊下にベットを並べている光景も珍しくありませんでした。トリアージは看護師が主体的に行い、必要に応じて血液ガス分析や心電図もその場で行っていました。医師は診察・カルテ記載・他科へのコンサルトが中心で、患者さんの検査室やベットへの案内・移動などは専門のスタッフが担当しており、役割分担が非常に明確でした。患者さんは高齢者の肺炎、心不全の患者が多く、日本の救急と似た印象でしたが、入院ベットは常に逼迫しており、入院のため数日間救急外来で待機している患者さんもいるほどでした。

救急入口…外にも患者が溢れてます
続々と急患来ます…無料ですし…

救急科の人気と医療文化

 救急科実習中の医学生やレジデントに話を聞くと、イタリアでも救急科は人気がないそうで、理由は“stressful”とのことでした。日本と一緒ですね。一方で人気があるのは循環器科・放射線科・形成外科などだそうです。循環器科も急患が多くてstressfulなのではと思いますが、何が違うのか不思議です。

患者さんの雰囲気は全体的に日本ほど時間的な切迫感がない感じでした。待ち時間が長くても不満を言う人は少なく、穏やかな雰囲気で診療が進んでいる印象でした(ただ単に、私がイタリア語を理解できていないだけかもしれませんが・・・・)レッドルームのベットで携帯電話の使用や飲食も許可されており、NSTEMIの患者が普通にトイレに行ったり、飲食しているなど、日本では考えられないような自由さでした。その自由さが、待ち時間が長くても不満が少ない理由かもしれません。また、喫煙もイタリアでは非常に規制が緩く、観光地や公共の場での喫煙は普通でしたし、驚くことに、救急外来のレッドルームで看護師さんが普通に電子タバコを吸っていました。文化の違いを肌で感じた瞬間でした。

のんびり廊下のベッドで入院待ち…って大丈夫ですか?

言語とコミュニケーション

 イタリア人は非常にフレンドリーで会話好きでした。英語学習の環境は日本と非常に似ていて、日常生活で英語をしゃべる機会はほとんどないそうです。自分で英会話教室に通ったりして学習していると話していました。医学教育も全部イタリア語のため、英語が苦手な医療従事者が多い印象でした。そのため、私にとっては逆に会話は聞きやすくて、難しい単語や言い回しなどもないため非常にコミニケションが取りやすく感じました。カルテ記載や難しい説明などはイタリア語なので、そんな時は翻訳アプリが非常に有効で、コミュニケーションを円滑にするうえで大きな助けとなりました。

研修を終えて

 この研修を通して、我々の医療を客観的に見直すことができました。制度や文化の違いを超えて、医療の本質を見つめ直す貴重な経験でした。カターニアの医療スタッフの皆さん、そしてこのような機会をくださった大学病院の関係者皆さまに心より感謝いたします。今後も国際的な視点を持ち、柔軟で誠実な医療提供を目指していきたい思います。


 横田先生ありがとうございました!研修報告会での詳細発表を楽しみにしております。予算出して頂いた被ばく医療連携推進機構の関係者の皆様にも厚く御礼申し上げますありがとうございました。

カターニア大学といえば象らしいです…アフリカ近いから?
街中にも象

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