- 2024年4月7日、日本集中治療医学会は「日本版重症患者の栄養療法ガイドライン2024(J-CCNG2024)」を公式サイトで先行公開しました
- 本ガイドラインは2016年版から約8年ぶりの全面改訂となり、重症患者の栄養管理に関する最新エビデンスと推奨をまとめています
- 公式サイトでは本編および付録の全文が閲覧可能です(印刷・コピー・転載は不可)
- アプリ版・英語版(Journal of Intensive Care)は既に公開済みで、ダイジェスト版は2025年10月頃、正式版は2025年9月頃に雑誌増刊号として出版予定です
このガイドラインは、集中治療室(ICU)に入室する、または集中治療を必要とする成人および小児患者さんの予後改善を目的として作成されました 。栄養療法に精通していない医療従事者も含め、集中治療に関わるすべての医療スタッフが対象読者として想定されています 。
ガイドラインの概要
- 目的: 重症患者さんの死亡率減少、ICU滞在期間や人工呼吸器使用期間の短縮、合併症減少、身体機能改善などを目指した栄養療法の理解を深め、実施を支援すること
- 対象: 原疾患を問わず、ICUでの治療を必要とする、あるいはそれに準じた集中治療を必要とする成人および小児患者
- 特徴:
- GRADEシステムを導入し、エビデンスに基づいた推奨を作成
- 多職種(医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士など)の専門家が作成に参加
- 免疫調整療法、特殊な病態(肥満、低体重、Refeeding症候群など)や小児に対する栄養療法を含む37のクリニカル・クエスチョン(CQ)と24の推奨を提示
- 身体機能や筋肉量といった、Post-Intensive Care Syndrome (PICS)にも関連するアウトカムも考慮
主な推奨事項(抜粋)
成人
- 早期経腸栄養: 集中治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始することを強く推奨(GRADE 1B)
- 経腸栄養 vs 経静脈栄養: 経静脈栄養よりも経腸栄養を行うことを弱く推奨(GRADE 2C)
- タンパク質投与量: 標準を超えるタンパク質量(>1.2g/kg/day)を投与することを弱く推奨(GRADE 2D)
- プロトコルの使用: 栄養投与プロトコルを用いた栄養療法を行うことを弱く推奨(GRADE 2B)
- プレバイオティクス/シンバイオティクス: プレバイオティクスまたはシンバイオティクスを投与することを強く推奨(GRADE 1B/1C)
- プロバイオティクス: プロバイオティクスを投与することを弱く推奨(GRADE 2C)
- ω-3系脂肪酸: ω-3系脂肪酸を強化した経腸栄養を行うことを弱く推奨(GRADE 2C)
- グルタミン: グルタミンを強化した経腸栄養を行わないことを弱く推奨(GRADE 2D)
- 間接熱量測定: 消費エネルギー量の推定に間接熱量測定を行うことを弱く推奨(GRADE 2B)
小児
- 早期経腸栄養: 治療開始後48時間以内に経腸栄養を開始することを弱く推奨(GRADE 2D)
- タンパク質投与量: 標準よりも多いタンパク質量(>2.0g/kg/day)を投与しないことを弱く推奨(GRADE 2D)
- 経胃間欠投与: 経胃栄養投与法として、経胃間欠投与を行うことを弱く推奨(GRADE 2C)
- 高濃度人工乳: 0.9〜1.0kcal/mL程度の高濃度人工乳の投与を弱く推奨(GRADE 2D)
- 栄養アセスメント: 栄養アセスメントを行うことは必要である(Good Practice Statement)
今回のガイドラインは、重症患者さんの栄養療法に関する最新のエビデンスをまとめ、臨床現場での実践に役立つ指針を提供しています。特に、早期経腸栄養の重要性や、個々の病態に応じた栄養投与量の設定などが示されています。医学生や研修医の皆さんも、ぜひ本ガイドラインを参照し、日々の学習や臨床に活かしてください。
注意: 本ダイジェストはガイドラインの一部を抜粋・要約したものです。詳細については、必ず原文をご確認ください。